前回は、再生可能エネルギー拡大に対する送配電システムの課題について取り上げました。
前回の投稿
→【再生可能エネルギー発電と送配電システム】 (その1)現在の送配電システムの抱える課題とは?
今回は、送配電システムの課題を解決する現段階での有効手段である、「電力の自家消費」を取り上げたいと思います。
電力の自家消費とは、余った電気を売電せずに蓄電池などにためることにより、作った電気を全て自分で使います。
そのため、太陽光パネルなどの発電設備の他に「蓄電池」の購入が必要となります。
しかし蓄電池の価格は、年々下がってきており、性能も容量も飛躍的に向上しています。
ご家庭でも、電化製品を買うような感覚で「蓄電池」を購入出来る日が来るのもそう遠くはないでしょう。
そして、電力の自家消費には、売電にはない3つの大きなメリットがあります。
電力の自家消費の3つのメリット
1.「固定買い取り価格の低下」の影響を受けない
自家消費では、作った電気を「売電」せずに全て自分で使うので、今後予想される「固定買い取り価格の低下」の影響を受けません。
電気を「自給自足」出来るので「自給率」が高ければ高いほど「電気料金の値上がり」の影響も受けにくくなります。
2.出力制御の影響を受けない
出力制御とは、管内の再生可能エネルギー全体の発電量が一定の割合を超えて需要を上回った場合に、再生可能エネルギー電力の受け入れを制限することです。
今後、再生可能エネルギーの更なる拡大に伴い、出力制御が多く発生することが予測されます。
出力制御が行われた場合、余った電気を売電出来ないため、「せっかく作った電気を捨てる」ことになります。
せっかく作った電気を買い取ってもらえなければ、収入はゼロになります。
出力制御が行われた場合、売電収入がゼロになるリスクがあるのです。
それに対して自家消費では、電気を蓄電池に蓄えて全て自分で使うので、出力制御の影響をゼロに出来ます。
3.災害時も電気が使える
蓄電池のない「売電」の場合、災害などによる長期停電時は、昼間などの発電している時間帯しか電気が使えません。
それに対して、自家消費では、蓄電池を備えているので、夜間などの発電していない時間帯でも電気が使えます。
自家消費では、基本的に足りない電気を電力会社から購入するので、自給率が高ければ高いほど、電力会社からの購入電力は少なくなります。
仮に自給率が50%だった場合では、災害による長期停電時は、通常時の50%の電気が使えます。
自家消費では、電気の自給率が高ければ高いほど、災害時の影響を少なくすることが出来ます。
6年前の東日本大震災では、停電が長引き、暖房が使えずに多くの方が不自由な生活を余儀なくされました。
東日本大震災が発生した3月は、東北地方では氷点下まで気温が下がり、暖房器具が必要不可欠な時期でした。
しかし、多くの家庭で使われている「石油ファンヒーター」は、灯油があっても「ファンを動かすための電気」がなければ作動しません。
北国においては、石油ファンヒーターを動作させるだけの電気でも自給できれば、冬場に災害による停電があった時に大きな助けとなります。
さらに、一般家庭の他にも、病院や災害時に避難所となる公共施設での自家消費が普及することで、「災害に強い社会づくり」も可能となります。
まとめ
このように、自家消費は、蓄電池の購入が必要となりますが「売電」にはない大きなメリットがあります。
自家消費は、売電に比べて投資額が大きくなりますが、「固定買い取り価格の低下」、「電気料金の値上げ」、「出力制御」の3つのリスクを低減出来るのです。
しかも、電気の自給率が高ければ高いほど、3つのリスクは少なくなり、100%自給できればリスクはゼロにできます。
さらに、自家消費が増えて、公共施設や各家庭に蓄電池が普及することで「災害に強い社会づくり」が可能となります。
次回
今回は、電力の自家消費の電気を使う側のメリットについて見ていきました。
自家消費は、電気を使う側だけでなく、電気を供給する電力会社側にも大きなメリットがあります。
電気の自家消費が増えることで、発電所の負担が軽減され、電力系統全体が安定します。
次回は、この電力の自家消費について、電力系統全体から見たメリットについて見ていきたいと思います。
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